- 2009/08/10(月)
ふてっくされたような顔でどん、とぶつかられ、私は相手を受け止めた。金色の髪に赤と緑の瞳のカチーナ・タラスクだ。
「失礼しましたっ、ギリアム少佐!」
すこし斜めの敬礼をして彼女は私を見上げる。目の奥に、苛々が見えた。なんとなく、構ってもらえなくてすねている猫のようにも見える。
「構わないよ。それより疲れてるようだが」
彼女の体をささえ、低Gの廊下に立たせた。
「気遣いは無用に願います」
「また、専用機にこだわっているのか?」
「あんたらみたいになれるほど腕がいいわけじゃないんでね!」
おやおや。酒が入っているようだ。
「そうだなぁ、もう少しおしとやかになればカチーナ中尉も目が出るよ」
「嫌味かセクハラもエース級かよ!」
「いや、本気だよ」
俺は自然に口元がほころぶのがわかった。彼女みたいなまっすぐな人間は好きだ。
まだ何もしらず、情熱のままに走っていられる姿は正直うらやましい。
「……!」
「そうしてると可愛いな。猫のようだ」
ぽんぽん頭を撫でてあげると彼女は本気で怒り出した。
「いい加減にしろ!人を馬鹿にするにもほどがある!誰が猫だよ!」
「そうやってすぐ怒ったり、色違いの目などだな。
ペルシャ猫とかそういう目が多い」
怒るのを承知で頭をくしゃくしゃ撫でた。うん、実に可愛い。
「人の頭を勝手に撫でるな!気持ち悪い!
本気でセクハラで訴えるぞこら!」
「うんうん、わかったわかった。ほーらごろごろごろ」
喉を撫でる。やりすぎたかな、とは思うのだが、こうもこちらの予想通りになると面白くて可愛くて仕方ない。能力無しでもここまでわかりやすい性格はゼンガー以上だろう。次はたぶん暴力に訴える。
ぱん。
乾いた音が響いた。横っ面を張られてしまった。
「中尉、喉見せてごらん?ヘルメットがきついんだろう、こすりあとができている」
まがりなりとも上官をぶん殴ってしまった、流石に軍人根性がよみがえってきたらしく、中尉は茫然自失としている。喉をさらに触ったら手を振り払われた。
「いっとくが憲兵にでも言ってみろ!てめーが人のこと猫扱いした変態セクハラ野郎だってぶちかましてやるからなっ!」
「言わないよ。一体なにを俺が憲兵にいわなきゃならないのかな。
たとえば中尉が少佐に横っ面を張ったとか?」
くすくす笑いがとまらない。本当に可愛い性格の女性だ。
「それ以外になにがあるんだよ!」
つくづく自爆するタイプだ。
「じゃあ、君は俺に弱みを握られてしまったというわけだ。大変だな」
「……」
「まあこの案件の場合、君の日頃の行い、俺の業績などを加味して考えて、軍法第268条による上官暴行罪に相当し、さらに反逆罪、合わせて300万以下の罰金および降格……。
専用機パイロットには選ばれないだろうね」
「……頼むっ!」
彼女は頭を下げた。「このとおり、黙っててくれればなんでもするから!
殴ったのは悪かった!」
べつに構わないよそのほうが面白いから避けなかっただけだし、といいかけて、俺の中のいたずら虫が騒ぎ出した。
教導隊時代、これのおかげでエルザムやゼンガーと幾度悪さをやらかしたことか。カイ少佐にお前だけは信じてたのにと酔いの涙で愚痴られたことがある。
「何でもする?」
「ペンキ塗りでも機体整備でも」
つくづく頭がそういう方向にしか行かないらしい。
「じゃ、今夜俺の部屋においで」
空間が凍りついて砕けたガラスみたいになったら、こんな雰囲気なんだろうと思った。
カチーナ中尉は真っ青な顔で立ち尽くしている。
うーん。
ゼンガー以上にからかいがいのある逸材だ。
「まあ自由意志だから、こういうことは」
最後に頭をなでて、ほっぺたをつっついてから俺は大またで立ち去った。
まさか来るはずもないだろうと思っていたのだ。
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「失礼しましたっ、ギリアム少佐!」
すこし斜めの敬礼をして彼女は私を見上げる。目の奥に、苛々が見えた。なんとなく、構ってもらえなくてすねている猫のようにも見える。
「構わないよ。それより疲れてるようだが」
彼女の体をささえ、低Gの廊下に立たせた。
「気遣いは無用に願います」
「また、専用機にこだわっているのか?」
「あんたらみたいになれるほど腕がいいわけじゃないんでね!」
おやおや。酒が入っているようだ。
「そうだなぁ、もう少しおしとやかになればカチーナ中尉も目が出るよ」
「嫌味かセクハラもエース級かよ!」
「いや、本気だよ」
俺は自然に口元がほころぶのがわかった。彼女みたいなまっすぐな人間は好きだ。
まだ何もしらず、情熱のままに走っていられる姿は正直うらやましい。
「……!」
「そうしてると可愛いな。猫のようだ」
ぽんぽん頭を撫でてあげると彼女は本気で怒り出した。
「いい加減にしろ!人を馬鹿にするにもほどがある!誰が猫だよ!」
「そうやってすぐ怒ったり、色違いの目などだな。
ペルシャ猫とかそういう目が多い」
怒るのを承知で頭をくしゃくしゃ撫でた。うん、実に可愛い。
「人の頭を勝手に撫でるな!気持ち悪い!
本気でセクハラで訴えるぞこら!」
「うんうん、わかったわかった。ほーらごろごろごろ」
喉を撫でる。やりすぎたかな、とは思うのだが、こうもこちらの予想通りになると面白くて可愛くて仕方ない。能力無しでもここまでわかりやすい性格はゼンガー以上だろう。次はたぶん暴力に訴える。
ぱん。
乾いた音が響いた。横っ面を張られてしまった。
「中尉、喉見せてごらん?ヘルメットがきついんだろう、こすりあとができている」
まがりなりとも上官をぶん殴ってしまった、流石に軍人根性がよみがえってきたらしく、中尉は茫然自失としている。喉をさらに触ったら手を振り払われた。
「いっとくが憲兵にでも言ってみろ!てめーが人のこと猫扱いした変態セクハラ野郎だってぶちかましてやるからなっ!」
「言わないよ。一体なにを俺が憲兵にいわなきゃならないのかな。
たとえば中尉が少佐に横っ面を張ったとか?」
くすくす笑いがとまらない。本当に可愛い性格の女性だ。
「それ以外になにがあるんだよ!」
つくづく自爆するタイプだ。
「じゃあ、君は俺に弱みを握られてしまったというわけだ。大変だな」
「……」
「まあこの案件の場合、君の日頃の行い、俺の業績などを加味して考えて、軍法第268条による上官暴行罪に相当し、さらに反逆罪、合わせて300万以下の罰金および降格……。
専用機パイロットには選ばれないだろうね」
「……頼むっ!」
彼女は頭を下げた。「このとおり、黙っててくれればなんでもするから!
殴ったのは悪かった!」
べつに構わないよそのほうが面白いから避けなかっただけだし、といいかけて、俺の中のいたずら虫が騒ぎ出した。
教導隊時代、これのおかげでエルザムやゼンガーと幾度悪さをやらかしたことか。カイ少佐にお前だけは信じてたのにと酔いの涙で愚痴られたことがある。
「何でもする?」
「ペンキ塗りでも機体整備でも」
つくづく頭がそういう方向にしか行かないらしい。
「じゃ、今夜俺の部屋においで」
空間が凍りついて砕けたガラスみたいになったら、こんな雰囲気なんだろうと思った。
カチーナ中尉は真っ青な顔で立ち尽くしている。
うーん。
ゼンガー以上にからかいがいのある逸材だ。
「まあ自由意志だから、こういうことは」
最後に頭をなでて、ほっぺたをつっついてから俺は大またで立ち去った。
まさか来るはずもないだろうと思っていたのだ。
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